古民家のリノベーションの費用相場は？実例もあわせて紹介

古民家とは（登録有形文化財制度の観点）

「古民家」とは明確な法的定義があるわけではありませんが、一般的には築年数の経過した日本家屋を指します。国の登録有形文化財制度における基準に合わせて考えると、建築後50年以上が経過した木造軸組構法の伝統工法または在来工法の住宅が古民家とみなされます。これは、文化的な価値を有する建造物を登録・保存する制度の基準を参考にしたものです。また、一般社団法人全国古民家再生協会では「古民家」の定義を昭和25年（1950年）の建築基準法制定以前に建てられた伝統的構法の住宅と位置付けています。要するに、伝統的な工法で造られ50年以上の時を経た木造住宅が古民家と呼ばれると考えてよいでしょう。

古民家は、都市部や人気エリアにも散見され吉祥寺から徒歩圏内の庭付き古民家（ 東京都練馬区129㎡の売買物件）が5000万円以下で売りに出ていた事もあるなど、比較的手頃な価格で購入できる場合があります。築年数が経過していたり、接道条件を満たしておらず再建築不可だったり、様々な理由から評価額が低く抑えられるためです。例えば都心近郊でも、築数十年の古家付き土地なら更地や新築より安価に出回るケースがあります。

そんな古民家のリノベーション費用は、工事の代表的な４種類の工事内容に分類され、工事の内容や規模により大きく変動します。

部分的な改修であれば数百万円で済むケースもあれば、全解体再生となると数千万円かかることも珍しくありません。事前に費用相場や工事の種類を把握しておくことで、予算に合わせた計画的なリノベーションが実現できるでしょう。本記事では、工事内容別・部分別の費用相場から、実例、費用を抑える方法まで詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

【工事内容別】古民家リノベーションの費用相場

古民家のリノベーションには、工事の規模に応じていくつかの種類があります。それぞれ費用相場や工事内容が異なるため、目的や予算に合わせて選択することが重要です。ここでは代表的な4つのリノベーション方法について、費用相場と特徴を紹介します。

一般的なリノベーション

一般的なリノベーションは、壁紙や床仕上げの張り替え、水回り設備などを更新する方法です。費用相場は工事範囲や内装グレードなどによりますが、100万円〜1,000万円程度が相場といえるでしょう。構造部分には手を加えないため、比較的短期間で工事が完了し、コストも抑えられる点が特徴です。古民家の風合いを残しつつ、現代の暮らしに必要な最低限の機能を追加したい方におすすめです。

半解体再生リノベーション

半解体再生リノベーションは、柱や梁などの主要な構造材を残しつつ、壁や床を一度解体して作り直す方法です。部分的な工事であれば費用を抑えられますが、全体の工事となると費用が大幅に増額となります。費用相場については300万円〜2,000万円程度となります。壁や床を解体してスケルトン状態にするため、構造材の状態を確認しながら必要な補強を行えるといったメリットがあります。内外装すべて綺麗な状態にした上で耐震性や断熱性も確保したい方におすすめのリノベーション方法です。

全解体再生リノベーション

全解体再生リノベーションは、建物をいったん解体し、再利用可能な部材（柱・梁など）を選別したうえで再構築する方法です。費用相場は1,000万円〜4,000万円以上となり、新築に近いコストがかかります。ただし、建て替えとは異なり再利用できる部分を綺麗にして活用するといった手法のため、古民家の風合いを残せるといったメリットがあります。

移築再生リノベーション

移築再生リノベーションは、古民家を一度解体して別の場所に移築し、再生する方法です。費用相場は2,000万円以上と高額になります。解体時に部材を丁寧に取り外し、新しい土地で組み直すため、高度な技術と時間が必要です。歴史的価値のある古民家を保存しながら、理想の立地で暮らせるというメリットがありますが、新築よりも高額なコストが必要なため、費用対効果や保存目的を踏まえ慎重に検討しましょう。

【部分別】古民家リノベーションの費用

 

リノベーション箇所	工事内容	費用相場
キッチン	・キッチン交換 ・キッチン配置変更 ・壁紙や床材張り替え	50〜200万円程度
トイレ	・トイレ交換 ・壁紙や床材張り替え	15〜60万程度
風呂	・ユニットバス入れ替え ・在来浴室改修	50〜150万円程度
リビング・居室	・間取り変更 ・壁紙や床材張り替え ・照明器具入れ替え ・窓リフォーム	15〜300万円以上
屋根	・葺き替え、カバー工法 ・塗装	50〜300万円程度
外壁	・塗装 ・カバー工法	50〜300万円程度
構造部	・耐震改修	20〜300万程度

リノベーション対象ごとに分割して検討することで、予算に合わせて取捨選択しやすくなります。ただし、劣化状況や部材のグレードにより価格が大きく異なるため、あくまで目安として参考にしてください。また、古民家特有の構造や建材を使用する場合は、一般的な住宅よりも工事費が高くなる傾向があります。複数箇所を同時に施工すれば、足場代や養生費などの共通コストを削減できるケースもあるため、総合的な計画を立てることをおすすめします。

古民家ではこの部分は高くなりやすい

古民家のリノベーションでは、一般的な住宅に比べて費用が高くなりやすいポイントがあります。とくに、構造に関わる部分や、伝統的な建材・工法が使われている部分はコストがかさみやすいため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

基礎・構造補強（耐震改修）

古民家は、石場立てや無筋コンクリートの基礎など、現行の耐震基準を前提としていない構造であることが多く、耐震改修や基礎の補強工事が必要になるケースがほとんどです。  

壁や床を剥がしたタイミングで劣化やシロアリ被害が見つかることも多く、当初の想定よりも費用が増える要因になりやすい部分です。

屋根（茅葺き・重い瓦屋根など）

古民家では、茅葺き屋根や重い和瓦が使われていることがよくあります。  

これらの屋根は、葺き替えや下地の補修に高い技術が必要で、材料費よりも職人の手間賃がコストに大きく影響します。また、屋根が重い場合は、構造全体の補強が必要となることもあり、工事費用がかさむ要因になります。

土壁・茅葺き屋根・伝統工法に伴う追加費用

古民家ならではの魅力である土壁や茅葺き屋根、伝統工法による木組みは、そのまま残そうとすると費用が上がりやすいポイントです。

土壁：竹小舞（下地）から土を塗り重ねるため、解体・再施工ともに手間がかかります。乾燥にも時間が必要で、工期が長くなる分コストも上昇します。

 茅葺き屋根：葺き替えや補修ができる職人が限られており、人件費が高くなりがちです。部分補修でも高額になることが多く、全面葺き替えとなると新築並み、もしくはそれ以上の費用がかかる場合もあります。

伝統工法の木組み：継手・仕口で組まれた構造を活かしながら補強するには、高度な技術を持つ大工による対応が必要です。既存の梁や柱を活かして「見せるデザイン」にする場合も、一本ごとに調整や補修が必要となり、その分の手間が費用に反映されます。

開口部・建具まわり（窓・障子・戸など）

古民家では、木製建具や大きな開口部が多く、断熱や気密の確保が課題になりやすい箇所です。  

二重窓の新設やサッシの交換、建具の造作・調整などを行うと、見た目以上に費用がかかることがあります。とくに、古い建具の意匠を残しつつ断熱性も高めたいといった場合は、オーダー対応となることが多く、コストアップにつながります。

古民家ならではの費用をどう抑えるか

古民家特有の部分はどうしても割高になりがちですが、以下のような工夫でコストを抑えることも可能です。

土壁を一部のみ残し、その他は現代的な壁材に切り替える

茅葺き屋根の意匠を内側の天井で見せつつ、外側は板金や瓦に変更する

すべてを「本格伝統工法」で直すのではなく、見せたい部分だけ伝統工法を活かす

こうした工夫により、古民家ならではの雰囲気を残しながら、予算とのバランスを取りやすくなります。

【費用別】古民家リノベーションの実例

実際の古民家リノベーション事例と費用を紹介します。工事内容や施工期間、費用などを具体的にイメージする際の参考にしてください。

実例①：築80年の古民家を2,000万円でフルリノベーション

築年数	80年
構造	木造平屋
内容	・間取り変更 ・水回り設備更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・耐震補強
リフォーム費用	約2,000万円
施工期間	約4か月

築80年の古民家の水回りと内装を中心にリノベーションした事例です。キッチンとトイレを最新設備に交換し、リビングと和室の畳、壁紙を一新しました。構造部分は補強を行いつつも昔の風合いを活かしたデザインにしています。生活に直結する部分をメインに改修することでコストを抑えることができました。

実例②：築70年の古民家を1,000万円で快適空間に

 

築年数	70年
構造	木造平屋
内容	・水回り設備更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・二重窓
リフォーム費用	約1,000万円
施工期間	約2か月

築70年の古民家を、機能性を向上させながらリノベーションした事例です。水回り全体を更新し、全室の床材と壁紙を張り替えました。さらに、窓を二重サッシに交換し、壁に断熱材を追加することで冬場の寒さを大幅に改善しています。古民家特有の高い天井と太い梁を活かした、開放感のある住まいが完成しました。

実例③：築120年の古民家を500万円でリノベーション

 

築年数	120年
構造	木造平屋
内容	・水回り設備更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・間取り変更
リフォーム費用	約500万円
施工期間	約4か月

築120年の古民家を低価格でリノベーションした事例です。もともと住居として使用していたため、日頃から適切なメンテナンスを行っていたことから内装リフォームのみ行いました。水回り設備の更新や内装の張り替え、間取り変更といった部分リフォームで快適性を大幅に向上させることができました。

実例④：築60年の古民家を2,000万円で半解体再生

 

築年数	60年
構造	木造平屋
内容	・耐震改修 ・水回り設備更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・間取り変更
リフォーム費用	約2,000万円
施工期間	約2か月

築60年の古民家を半解体再生した事例です。耐震改修だけでなく、採光・通風改善のため窓を追加し、間取りも現代のライフスタイルに合わせて変更しました。内装も張り替え、古民家の趣を残しつつ清潔感ある空間に生まれ変わりました。耐震性能の向上から内装刷新まで、安全性と快適性を両立させたリノベーション事例です。

実例⑤：築75年の古民家を700万円でバリアフリー化

 

築年数	75年
構造	木造平屋
内容	・水回り設備更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・バリアフリー化
リフォーム費用	約700万円
施工期間	約1か月

 

築75年の住宅をバリアフリー化した事例です。老朽化していた水回り設備を一新し、使いやすさと安全性を向上させました。天井・壁・床は全面的に張り替え、清潔で快適な居住空間を実現しています。特に浴室では段差を解消し、高齢者でも安心して利用できるよう配慮しました。既存の建物を活かしながら、現代の住まいに求められるバリアフリー性能を備えた、安全で快適な住環境へと生まれ変わった事例です。

実例⑥：築80年の古民家を1,200万円でリノベーション

 

築年数	80年
構造	木造平屋
内容	・水回り設備更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・耐震改修
リフォーム費用	1,200万円
施工期間	約3か月

耐震改修も行い、安全性にも配慮したリノベーションを行った事例です。構造部分を露出させるデザインを採用し、梁や柱といった木材の質感をそのまま活かしながら防腐処理を行いました。建物の骨組みを見せることで、開放感ある空間を実現した古民家風の住まいへと刷新しました。

実例⑦：築120年の古民家を2,500万円で半解体再生

 

築年数	120年
構造	木造平屋
内容	・外装の更新 ・天井、壁紙、床の張り替え ・耐震改修 ・水回り設備更新 ・間取り変更
リフォーム費用	2,500万円
施工期間	約4か月

築120年の古民家を半解体再生した事例です。構造部分以外をすべて解体し、耐震改修を行った後、外装・内装をすべて新しくリノベーションしました。現代の耐震基準を満たしながら可能な限り既存の構造部材を露出させ、古民家独特の空間を残しています。また、広々としたLDKと充実した収納スペースを確保し、快適な暮らしを実現しました。

実例⑧：築95年の古民家を3,200万円で全解体再生

 

築年数	95年
構造	木造平屋
内容	・構造部材の更新 ・外装の更新・天井、壁紙、床の張り替え・耐震改修・水回り設備更新・間取り変更
リフォーム費用	3,200万円
施工期間	約6か月

築95年の古民家を全解体して再生した事例です。一度建物を完全に解体し、使用可能な柱や梁などの部材を丁寧に選別しました。その後、耐震性能を確保しながら再構築を行い、古民家の風情を残しつつ現代の住宅性能基準を満たす住まいへと生まれ変わらせました。伝統的な木材の質感や趣はそのままに、安全性と快適性を兼ね備えた、新しい命を吹き込まれた古民家再生事例となっています。

古民家リノベーションを検討しているならすまいパークへ

古民家リノベーションでは、伝統工法の知識や構造に関する専門的な知識が求められます。さらに建築基準法への適合や耐震補強など、通常のリフォームとは異なる技術と経験が必要になるため、一般的なリフォーム会社では対応が難しいケースも少なくありません。しかし、こうした古民家再生の実績を持つ専門業者を一から探し出すのは容易ではなく、複数社を探して比較検討するだけでも大きな負担となります。すまいパークなら、施工実績に基づいたリフォーム会社をネットで簡単に探せます。厳しい審査基準をクリアした優良リフォーム会社を厳選して紹介しているため、ハードルが高い古民家リノベーションでも、安心して依頼できる会社が見つかります。一括で複数社の見積もりを比較でき、すべて無料でご利用いただけますので、古民家リノベーションをご検討されている方は、ぜひすまいパークでご相談ください。

古民家リノベーション費用を抑える方法

古民家のリノベーション費用は工夫次第で大きく削減できます。品質を落とさずにコストを抑える方法を知っておくことで、予算内でより満足度の高いリノベーションが実現できるでしょう。

既存のものを活用する

既存の状態をなるべく活かしたリフォームを行うことで、費用を抑えられます。たとえば、間取り変更は「解体・廃材処分」「周辺補修」「間仕切り造作」「壁紙、床張り替え」といった多くの工事が必要ですが、既存の間取りを活かす場合は「壁紙、床張り替え」のみで完結します。腐食した部分などは除き、活かせる部分は最大限活用することをおすすめします。

複数の業者を比較する

リノベーション費用は業者によって大きく異なるため、必ず複数社から見積もりを取ることが重要です。最低でも3社以上に相談し、提案内容や価格を比較検討しましょう。ただし、単純に安い業者を選ぶのではなく、古民家の施工実績や提案力、アフターサービスなども総合的に判断する必要があります。見積もりの内訳が明確か、追加費用の条件が明示されているかなども確認ポイントです。

条件に優先順位を立てる

すべての希望を叶えようとすると予算オーバーになりがちなため、優先順位を明確にすることが重要です。まず耐震性や断熱性など、安全性と快適性に関わる基本性能を最優先に考えましょう。次に水回りなど生活に直結する設備の更新を検討し、最後に内装の美観に関わる部分を手掛けるという順番が一般的です。優先順位を明確にすることで、限られた予算で最大の効果を得られるでしょう。

まとめてリノベーションする

複数箇所を同時にリノベーションすることで、工事費を効率的に抑えられます。たとえば、足場を組む外装工事は、外壁と屋根を同時に行うことで足場代を一度で済ませられます。また、水回りをまとめて改修すれば、配管工事を効率的に進められるため、個別に行うよりもコストダウンが期待できるでしょう。ただし、一度に大規模な工事を行うと仮住まいが必要になる場合もあるため、その費用も含めて総合的に判断することが重要です。

補助金制度を活用する

国や自治体が提供する補助金制度を活用すれば、実質的な負担を大きく軽減できます。古民家のリノベーションでは、耐震改修や省エネ改修、バリアフリー化などが補助金の対象となるケースが多くあります。自治体によっては古民家再生に特化した独自の補助制度を設けている場合もあるため、お住まいの地域の制度を事前に確認しましょう。リノベーション会社に補助金申請のサポートや提案を依頼することをおすすめします。

古民家リノベーション費用に活用できる補助金制度

 

補助金制度	対象工事例	補助金額上限
子育てグリーン住宅支援事業	・断熱 ・二重窓 ・水回り設備更新	60万円
先進的窓リノベ2025事業	・二重窓 ・ドア交換	200万円
給湯省エネ2025事業	・給湯器	16万円
長期優良住宅化リフォーム推進事業	・耐震改修 ・劣化対策	210万円
既存住宅における断熱リフォーム支援事業	・二重窓 ・ドア交換 ・断熱	120万円
介護保険の住宅改修費補助	・段差解消 ・手すりの設置	18万円
自治体のリフォーム関連補助制度	・古民家再生に必要な工事	各自治体による

古民家のリノベーションでは、様々な補助金制度を組み合わせることで費用負担を大きく軽減できます。省エネ工事・耐震改修・バリアフリーリフォームに関する工事については、国からの補助金を活用できます。また、自治体独自の補助金制度もあるため、居住地域の制度を確認しましょう。ただし、補助金ごとに対象となる工事内容や性能基準が細かく定められているため、内容の確認が必要です。また、併用できない組み合わせもあるため合わせて注意が必要です。

古民家リノベーション費用に活用できる“古民家専用”補助金制度

古民家のリノベーションでは、一般の住宅向け補助制度とは別に、古民家や歴史的建造物のみを対象とした支援制度が存在します。これらの制度は、伝統的な建築文化を後世に残すことを目的としており、古民家特有の構造や意匠を維持しながら改修する場合に活用できます。ここでは、古民家だけが利用できる補助制度について詳しく紹介します。

1. 重要伝統的建造物群保存地区における補助制度

重要伝統的建造物群保存地区（いわゆる「伝建地区」）に指定された地域の古民家は、国や自治体から手厚い補助を受けられる場合があります。伝建地区は、伝統的な町並みを継承し、地域の文化的価値を維持することを目的としており、修理工事に対する補助率が高い点が特徴です。

対象
・伝建地区内に所在する古民家、町家、伝統建築物

補助内容の例
・屋根、外壁、建具など外観の修景工事
・耐震診断、耐震補強
・伝統的意匠の復元工事

補助率
・工事費の約1/2〜2/3（自治体によって変動）

古民家本来の外観や意匠を保ちながら改修を行いたい場合に非常に有効な制度です。

2. 登録有形文化財（建造物）に登録された古民家に対する補助

古民家が文化庁の「登録有形文化財」に登録されている場合、保存に関する補助制度を利用できます。文化財登録は、建物の歴史的価値や意匠を評価されて行われるもので、一般的な住宅には適用されません。

対象
・登録有形文化財（建造物）に登録された古民家

補助内容の例
・建物の保存修理工事
・防火・防災設備の整備
・外観保存を目的とした部分補修

文化財としての価値を保ちながら、安全性や耐久性を高めたい場合に活用される制度です。

3. 都道府県・自治体が実施する古民家専用補助制度

自治体独自で、古民家や町家だけを対象とした補助制度を設けている場合があります。特に、歴史的な町並みが残る地域では、外観保全や景観形成を目的とした補助が多く見られます。

兵庫県「古民家再生促進支援事業」

兵庫県では、伝統工法によって建てられた古民家を対象に、地域活性化を目的とした再生を支援しています。

対象
・昭和25年以前に建築された古民家
・伝統工法（木組み、土壁、和瓦など）が使用されている建物

補助内容
・専門家による建物調査（所有者負担なし）
・地域活用を目的とした改修工事への助成（最大1,000万円）

地域で古民家を活用した宿泊施設や交流拠点を整備するケースで特に利用されています。

奈良県・京都府・金沢市などの歴史地区「町家・古民家修景補助」

歴史的町並みが残る地域では、町家や古民家の外観を維持するための修景補助を設けている自治体が多くあります。

補助対象工事の例
・瓦屋根の葺き替え
・漆喰壁や板張りの外壁修理
・木製建具（障子・格子）の修復や復元

歴史的景観の維持が目的のため、外観に直結する工事が中心となります。

4. 古民家を活用した事業向けの補助制度

古民家を宿泊施設や飲食店、地域の拠点施設として活用する場合、観光庁や自治体が実施する「古民家活用補助」を利用できる場合があります。

活用例
・古民家をリノベーションした宿泊施設（民泊・旅館）
・古民家カフェやショップ
・地域交流施設、体験施設

補助内容の例
・改修工事費の一部補助
・耐震性向上のための補強費
・防火設備整備

古民家の魅力を活かしながら地域活性化につながる取り組みが求められるため、一般住宅では利用できない制度です。

5. 古民家専用補助金を活用する際の注意点

古民家に特化した補助制度は、一般住宅とは条件が大きく異なります。活用の際は、以下の点に注意する必要があります。

・自治体ごとに「古民家の定義」が異なる（例：昭和25年以前の建築、伝統工法など）
・伝建地区や景観地区の場合、外観のデザイン制約が発生する
・観光用途や地域活性を目的としたほうが補助額が大きい傾向
・制度は年度ごとに変更されるため、最新情報の確認が必要

古民家ならではの補助制度を上手に活用することで、費用を抑えながら伝統建築の魅力を残したリノベーションが可能になります。

古民家リノベーションとは

古民家リノベーションとは、築年数の経過した日本の伝統的な住宅を、現代の暮らしに合わせて改修することを指します。古民家リノベーションの特徴は、古民家独自の風合いを残しながら、断熱性や耐震性などの性能を現代の基準まで引き上げる点にあります。単なるリフォームではなく、既存の柱や梁を磨いて露出させるなど古民家の特徴を活かしたリフォームを行います。ただし、古民家は築年数が経過しているため、耐震補強などにより安全面を確保する工事を行う必要があります。

古民家リノベーションのメリット

古民家をリノベーションすることは、新築や一般的な住宅リフォームにはない魅力的なメリットが数多くあります。環境への配慮から税制面での優遇まで様々な利点が挙げられます。

資源を守ることができる

古民家をリノベーションすることで、貴重な資源を守り環境保護に貢献できます。建物を新築すると大量の資材が必要となり、環境に負担がかかります。一方、古民家を再生すれば既存の木材や建材を活用できるため、新たな資源の消費を最小限に抑えられるでしょう。

節税につながる

古民家をリノベーションすると、固定資産税の負担を抑えられるメリットがあります。建て替えとは異なり、建物の評価額が大きく変動しないケースが多いことが理由として挙げられます。ただし、増築を伴う大規模なリノベーションでは評価額が上がる場合もあるため注意が必要です。

歴史的価値がある日本家屋を残せる

古民家には、現代の住宅にはない歴史的価値と独特の風合いがあります。太い梁や柱、土間、縁側など、日本の伝統的な建築様式を体感できる空間が特徴です。リノベーションによってこれらの特徴を残しながら快適性を向上させることで、次世代に貴重な文化財を継承することにもつながります。また、古民家特有の落ち着いた雰囲気や、経年変化による味わい深い素材感は、新築では再現することが難しいといえるでしょう。

地価の高いエリアの物件を手頃に購入できる

古民家は、都市部や人気エリアでも比較的手頃な価格で購入できる場合があります。築年数が経過しているため建物の評価額は低く、一般的な相場よりも安く手に入るケースが多いためです。ただし、建物の価格だけでなくリノベーション費用がかかることも考慮して、価格を比較すると良いでしょう。ただし、劣化状況によりリノベーション費用が想定より膨らむ可能性もあるため、注意が必要です。

地域の活性化につながる

古民家のリノベーションは、地域の活性化にも大きく貢献します。空き家となっていた古民家を再生することで、景観の維持や地域の魅力向上につながります。また、移住者が古民家をリノベーションして住むことで、過疎化が進む地方に新たな活力が生まれるでしょう。

耐久性が高い木材が使用されている

古民家には、樹齢100年を超えるような耐久性の高い木材が使用されています。これらの木材は適切にメンテナンスすれば数百年以上使用できるため、リノベーション後も長く安心して住み続けられるでしょう。また、太い梁や柱は構造的な安定性も高く、適切な補強を施すことで現代の耐震基準を満たすことも可能です。貴重な資源を活かしながら、丈夫で長持ちする住まいを実現できる点が古民家の大きな魅力といえるでしょう。

古民家リノベーションのデメリット

古民家のリノベーションには魅力的なメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。事前にリスクを把握しておくことで、適切な対策を講じたり、新築や建て替えとの比較検討ができるでしょう。

外気の影響を受けやすい

古民家は断熱性能が低く、外気の影響を受けやすい特徴があります。壁や天井に断熱材が入っておらず、気密性も低いため、冬は寒く夏は暑いという課題があります。快適性を担保するため、リノベーション時に断熱材を追加したり、二重窓を採用する必要があります。

想定より費用が膨らむ場合がある

古民家のリノベーションでは、工事を進める中で想定外の劣化が見つかり、費用が膨らむケースがあります。壁や床を剥がしてみないと分からない腐食やシロアリ被害、基礎の劣化などが発覚することも珍しくありません。当初の予算より大幅に費用が増えることもあるため、事前の建物調査を徹底的に行い、追加工事なども含めて見積もりに反映してもらうようにしましょう。

耐震性に懸念が残る

古民家の多くは旧耐震基準で建てられているため、現代の基準を満たしていないケースがほとんどです。1981年以前に建てられた建物は特に注意が必要ですので、耐震診断を必ず実施し、専門家の意見を聞きながら適切な補強計画を立てることが重要です。

仕上がりのバランスが悪くなる場合がある

古民家のリノベーションでは、古いものと新しいものを組み合わせるため、デザインのバランスを取るのが難しい場合があります。伝統的な柱や梁を残しながら現代的な設備を導入すると、統一感のない空間になってしまう可能性もあります。着工前に、経験豊富な設計者と打ち合わせを行い、納得のいくデザインを検討することが重要です。

古民家リノベーションの主な流れ

古民家のリノベーションを成功させるには、計画的に進めることが重要です。ここでは、物件選定から引き渡しまでの基本的な流れを紹介します。

物件の選定

まず、リノベーションする古民家を選定します。立地や建物の状態、周辺環境などを総合的に判断しましょう。特に、築年数や構造、劣化の程度によってリノベーション費用が大きく変わるため、工事費用も踏まえた検討を行う必要があります。

建物の状態確認・調査

物件が決まったら、専門家による詳細な建物調査を実施します。基礎や土台、柱、梁などの構造材の状態を確認し、シロアリ被害や腐食の有無をチェックします。また、耐震診断も同時に行い、補強が必要な範囲を把握することが重要です。

プランニング・施工依頼

建物の状態を把握したら、具体的なリノベーションプランを立てます。希望する間取りやデザイン、導入したい設備などを設計者に伝え、予算内で実現可能なプランを作成してもらいます。複数の業者に提案を依頼し、見積もりなどを含めて比較検討することをおすすめします。

施工・工事

契約後、リノベーション工事がスタートします。工事の規模によっては仮住まいが必要になる場合もあるため、事前に引っ越しや荷物の保管場所を確保しておきましょう。工事中は定期的に現場を訪れ、進捗状況を確認することをおすすめします。

引き渡し・アフターサポート

工事が完了したら、施工業者と一緒に最終確認を行います。設備の動作確認や仕上がりのチェックを丁寧に行い、問題があれば是正してもらいましょう。すべての確認が終わったら、引き渡しとなります。引き渡し後は、アフターサポートとして定期的な点検が実施されることが一般的です。不具合や疑問点などがある場合は、点検の際に確認すると良いでしょう。

古民家リノベーションで押さえるべきポイント

古民家のリノベーションを成功させるには、いくつか重要なポイントがあります。計画段階から施工まで、各ステップで適切な判断をすることで、満足度の高い仕上がりを実現できるでしょう。

断熱性・耐震性を重視する

古民家リノベーションでは、デザインや雰囲気も大切ですが、まず優先すべきことは断熱性と耐震性の向上です。これらは住まいの安全性と快適性に直結する基本性能のため、優先して取り組むべき項目といえるでしょう。長期的な快適性と安全性を確保することが、古民家リノベーションを成功させるためのポイントです。

物件の下調べを徹底する

古民家を購入してリノベーションする場合、物件の事前調査を徹底することが重要です。特に、外観だけでは分からない構造材の劣化や、基礎の状態、シロアリ被害の有無などを専門家に確認してもらいましょう。また、壁が抜けない構造や劣化が激しい建物の場合、スケルトンリフォームに適さない場合もあります。可能であれば、購入前にリノベーション業者と共に建物を確認し、イメージ通りのリフォームができるかどうかの確認を行うことをおすすめします。

事前に資金計画を立てる

古民家のリノベーションでは、想定外の追加工事が発生しやすいため、余裕を持った資金計画が不可欠です。見積もり段階で算出された費用に加えて、予備費として10〜20%程度を確保しておくことをおすすめします。また、補助金を活用する場合は、申請から入金までのタイムラグも考慮した資金計画を行いましょう。

生活スタイルや暮らしやすさを考慮する

古民家の風合いを残すことも大切ですが、現代の暮らしに合った機能性も確保することが重要です。デザイン性を優先しすぎず、動線の効率化や収納スペースの確保、水回りの使いやすさなど、日常生活の快適性を左右する要素も踏まえて十分に検討する必要があります。

依頼するリフォーム工務店を慎重に選ぶ

古民家のリノベーションは、一般的な住宅とは異なる専門知識と技術が必要です。そのため、業者選びは特に慎重に行う必要があります。古民家の施工実績が豊富で、古民家特有の工法などに精通している業者を選ぶことが重要です。その上で複数の業者から提案を受け、施工事例や見積もり内容を比較検討しましょう。

古民家リノベーションを依頼する工務店の選び方

古民家のリノベーションを成功させるには、適切な工務店選びが不可欠です。ここでは、信頼できる施工業者を見極めるための重要なポイントを紹介します。

古民家の施工実績が豊富か

古民家のリノベーションには、古民家特有の工法が必要だったり、古材の扱いなど専門的な知識と技術が必要です。そのため、古民家の施工実績が豊富な業者を選ぶことが重要になります。ホームページや資料で過去の施工事例を確認し、自分が希望するデザインに近い実績があるかチェックしましょう。

見積書や説明内容が明確か

見積書の内容が明確かどうかは、施工業者の信頼性を測る重要な指標となります。あいまいな一式表現ではなく、工事項目ごとに費用が明示されており、使用する材料や工法についても具体的に記載されているかを確認しましょう。また、質問に対して丁寧に答えてくれるか、専門用語を分かりやすく説明してくれるかなども、業者の姿勢を見極めるポイントです。不明瞭な点がある場合は、契約前に必ず確認しましょう。

アフターサービスが充実しているか

古い建物を再利用するため、引き渡し後に不具合が起こることも少なくありません。リノベーション後も、定期的なメンテナンスや定期点検など、迅速な対応を行ってくれる業者を選びましょう。保証期間や保証内容、定期点検の有無や頻度を確認しておくことをおすすめします。

地域特有の知識があるか

古民家は地域によって建築様式や使用されている木材が異なるため、地域特有の知識があるかどうかの確認が重要です。地元で長く営業している業者や、特定の地域における施工実績が豊富な業者であれば、その地域の気候や風土に適した工法や材料の知識・技術を持っていると判断して良いでしょう。

リノベーション費用が妥当な金額か

見積金額が極端に安い、または高い場合は注意が必要です。相場より大幅に安い場合、必要な工事が省かれていたり、質の低い材料が使われている可能性があります。一方、相場より高すぎる場合も、不当な上乗せがないかの確認が必要です。複数社から見積もりを取り、内容を比較することで適正価格を把握することをおすすめします。

古民家のリノベーション費用に関するよくある質問

古民家のリノベーションを検討する際によく寄せられる質問について、具体的にお答えします。計画を立てる際の参考にしてください。

築50年の家のフルリノベーション費用はいくらですか？

築50年の家をフルリノベーションする場合、費用相場は600万円〜3,000万円程度です。ただし、建物の規模や劣化状況、希望する工事内容によって大きく変動します。全解体再生であれば3,000万円以上かかることもあります。一方、内装や設備を更新するリノベーションであれば、1,000万円以内に抑えられるでしょう。正確な費用を判断するには、建物の状態を専門家に調査した上で、詳細な見積もりを取ることをおすすめします。

築40年の家はフルリノベーションで何年住める？

築40年の家でも、適切なフルリノベーションを行えば、さらに30〜50年以上快適に住み続けることが可能です。特に古民家に使用されている良質な木材は、適切にメンテナンスすれば100年以上の耐久性を持ちます。リノベーション時に構造材の劣化部分を補修し、耐震補強や防蟻処理を施すことで、建物の寿命を大幅に延ばせるでしょう。

戸建てのリノベーションの場合、500万円でどこまでできますか？

500万円の予算があれば、古民家の部分的なリノベーションが可能です。具体的には、水回り設備の更新、壁紙・床材の全面張り替えが可能です。建物規模や劣化状況などにもよりますが、予算が余れば間取り変更や、二重窓設置なども検討できる可能性もあります。

古民家リノベーションをするタイミングはいつですか？

古民家リノベーションの適切なタイミングは、建物の劣化状況やライフスタイルの変化によって異なります。雨漏りやシロアリ被害、基礎のひび割れなど、建物の重大な劣化が見つかった場合は、早急にリノベーションを検討すべきといえるでしょう。生活に支障がない場合でも、1981年以前の建物は耐震性能が低いため、耐震診断により適切な補強工事を行うことをおすすめします。